「既婚」を隠されて交際した場合の慰謝料請求について

交際相手から既婚であることを隠されていた場合のように騙された結果、肉体関係を持ったというときには貞操権侵害を理由に慰謝料請求が可能な場合があります。

 

交際相手から既婚であることを隠されていた場合

交際相手から既婚であることを隠されていた場合、すなわち自分は独身者と結婚を前提とした真摯な交際をしていたと思っていたが実は相手が既婚者であったという場合、自己の貞操権侵害を理由に交際相手に対して慰謝料を請求できる場合があります。

まず、貞操権侵害といえるためには、相手方が、結婚するつもりもないのに結婚すると偽り、騙された結果、肉体関係を持ったことが必要です。つまり、相手方が、既婚者であることを隠していたことに加えて、積極的に結婚するつもりであると騙したという事情が必要です。

また、相手方が既婚者であったということは、知らなかったとはいえ相手の配偶者との関係では不貞行為に該当し得る行為に及んでいるということになります。このように自らも不貞行為という非難される行為に及びながら、交際相手に対して貞操権侵害を理由に慰謝料を請求することが許されるのかという問題があります。

これに対する判例の立場は、肉体関係を持つに至ったことについて交際相手と自分の違法性(悪さ加減)の程度を比較して、交際相手の違法性の程度の方が著しく大きいといえる場合に、貞操権侵害を理由に慰謝料請求できるというものです(最判昭和44年9月26日)。

既婚者であることを隠されていた人は、騙された結果、相手が独身だと信じていたのですから違法性の程度は弱いと考えられるので、相手方の違法性がそれほど大きくなくても慰謝料請求が認められる場合はあると思われます。

ただし、ちょっと注意を払えば既婚者であると分かったはずだというような場合には、既婚者であると知っていた場合に近い落ち度があると評価されることがあります。その分だけ相手方の違法性は大きい必要があります。

たとえば、さまざまな詐言を執拗に用いて肉体関係を迫ったといった事情が必要になってくるでしょう。

 

相手が既婚者であると知っていたが離婚すると騙されていた場合

交際相手から、妻と別れて結婚すると言われたのでこれを信じて肉体関係を持ったが、実は騙されていたという場合にも貞操権侵害を理由に慰謝料を請求できる場合があります。

この場合、騙されていた方も相手が既婚者であることを知っていたのですから、不貞行為に及んでいるという認識があり、肉体関係を持ったことに対する動機には相応の不法が認められます。したがって、交際相手の行為の違法性の程度がかなり大きい場合でなければ、慰謝料請求は認められません。

たとえば、交際相手側の事情として、婚姻するつもりもないのに離婚を成立させた後、婚姻する意思があると繰り返し伝えていたとか、妊娠したことを相談された際に出産を勧めたにもかかわらずその後交際を絶って他の女性と肉体関係を持ったとか、妊娠を希望していたことを知りつつ避妊せずに性交渉を行い相手に結婚の期待を抱かせ続けたといった事情が必要になります。

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