過失割合を争いたい方

1 過失割合とは

過失割合とは、たとえば交差点における出会い頭事故のように、どちらにも左右確認を怠った過失がある場合に、その過失の割合に応じて請求できる賠償額を減額することをいいます。

たとえば、A車とB車が交差点で出会い頭の事故を起こした場合、A車側の損害額が200万円、B車側の損害額が180万円、過失割合がA車:B車=40:60となった場合のお互いの損害額は次のように過失相殺によって減額されます。

 

過失割合

損害額

減額される額

請求できる額

A車

40

200万円

80万円

120万円

B車

60

180万円

108万円

72万円

 

2 過失割合の決まり方

過失割合は実務上、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」(別冊判例タイムズ38)という書籍に掲載された基準を参照して決定されることが多いといえます。

この判タ基準には、338個の事故類型ごとに「事故状況の図」、「基本の過失割合」、「修正要素」が掲載されています。

たとえば、信号機のある交差点において直進車と対向する方向からの右折車がともに青信号で交差点に進入して衝突した事故類型は、判タ基準の107番目の図が該当します。この事故類型に基本の過失割合は直進車が20、右折車が80とされています。修正要素はいくつかありますが、たとえば、右折車が合図をせずに右折を開始していた場合には、直進車の過失相殺率が基本の過失割合から-10修正されて、過失割合は直進車が10、右折車が90になります。

 

3 過失割合が納得できない場合の対処法

加害者側の保険会社から提示された過失割合が納得できない場合の典型例と対処法は次のとおりです。

 

事故態様に争いがあるケース

交差点の事故でどちらが青信号でどちらが赤信号だったのか争いになることがあります。このような場合、青信号で進入した側の過失は0なので、いずれが赤信号だったのかによって過失割合が天と地ほど変わってしまいます。青信号で進入した側からすると、相手が赤信号であったことを認めず過失相殺されてしまうことには納得がいかないでしょう。ここまで極端ではなくても、相手が事故の態様を争い、本来の事故類型とは違う過失割合が主張されることはしばしばあります。

このようなときは、お互いの車がどういう動きをしたのか、すなわち、事故態様について証明する必要がありますが、ドライブレコーダや防犯カメラの映像、目撃証人の証言のような証拠がない事案では、決定的な証拠がないということになります。

警察が作成した物件事故報告書や実況見分調書が、自分の言い分に沿ったものであれば、これらは有力な証拠となるので、弁護士会照会制度を用いて開示請求を行うことが考えられます。

それでも決め手に欠ける場合は、被害者と加害者の言い分が主な判断材料となりますが、これらは真逆の言い分になっていることが多いため、水掛け論に陥りがちです。

そのような場合、何とかなっとくできる妥協点を模索して示談を成立させるか、困難を承知で裁判を提起するかの選択を迫られることになるでしょう。

 

判タ基準の事故類型へのあてはめが間違っているケース

時に保険会社は、事故態様等の事実関係の詳細を確認せず敢えて単純化したうえで、判タ基準の事故類型の中から似ている図を見つけて無理矢理これにあてはめ、過失割合を主張してくることがあります。

このような場合、間違った事故類型へのあてはめを行っていることになるので、提示を受けた側は納得できないということが置きます。

このような場合の対処法としては、事故態様の詳細を明らかにしたうえで、問題となる道路交通法上の注意義務を確認し、その注意義務違反に照らして判タ基準のどの事故類型に近いのかを主張することになります。

 

判タ基準の修正要素が反映されていないケース

判タ基準の事故類型へのあてはめは間違っていないものの、修正要素が反映されておらず、基本の過失割合では納得できないということも起こり得ます。

その場合は、修正要素に該当する事実があることを証明して、修正要素を反映した過失割合を主張していくことになります。

ただし、修正要素の中でも立証が容易なものと立証が困難なものがあります。たとえば、「幹線道路」、「住宅街・商店街」、「夜間」、「児童・高齢者」といった場所、日時、年齢等に関する修正要素は、事故の後でも立証することが容易ですが、「速度超過」や「合図なし」といったものは事故直前の車両の動きを映した動画でも残っていない限り立証が困難です。

 

判タ基準に該当する事故類型が存在しないケース

判タ基準に該当する事故類型が存在しないというケースで、保険会社から過失割合を提示されたが、どうにも納得できないということも起こり得ます。

判タ基準が使えない場合の対処法として、判タ基準に掲載されている事故類型との外形的な類似性にこだわらずに、判タ基準の事故類型が前提としている注意義務違反との類似性から過失割合を類推するという方法があります。

また、過去の裁判例の中に類似するものがあればその裁判例で示された過失割合から類推するという方法も考えられます。

全く参考になるものがない場合には、車両の種類(四輪車、二輪車、自転車、歩行者)、道路の形状、道路交通法上の注意義務等から、過失割合を導き出すしかありません。

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