慰謝料を請求されたときの流れ

慰謝料を請求されたときの一般的な流れについて、①示談交渉、②裁判所の関与する手続、③金銭の支払いに分けて説明します。

 

1      示談交渉

慰謝料の請求をされるとき、はじめから民事裁判や民事調停を起こされることは珍しいことです。通常は、示談交渉からはじまります。示談交渉は裁判所が一切関与しない手続ですので、自由な方法で話し合いをすることになります。示談交渉の流れは次のとおりです。

 

慰謝料請求のはじまり

慰謝料請求のされ方にはいろいろなパターンがあります。

まずは、弁護士からの連絡か、当事者本人からの連絡かで大きく分かれます。弁護士からの連絡の場合、内容証明郵便が送付されてくるということが多いと思いますが、携帯電話に電話がかかってきたり、メッセージが送られてきたりすることもあります。

当事者本人から連絡が来る場合は、携帯電話に電話がかかってくることが多いと思いますが、場合によっては家や職場に当事者本人が訪ねてくるということもあります。

そのほか、弁護士以外の第三者から連絡がくるということもありますが、その第三者がどういう関係を有しているのかさまざまなので注意が必要です。

 

法律相談

はじめに慰謝料請求をされたときは、次に慰謝料問題に詳しい弁護士の法律相談を受けることになります。法律相談によって、今後注意するべきことを確認します。

 

委任契約の締結と着手金の支払い

法律相談を受けた後、弁護士に依頼する必要があると思ったら、委任契約を締結します。委任契約を締結する前に目指すべきゴールと弁護士費用をよく確認しておくのがよいと思います。

委任契約を締結したら、弁護士に着手金を支払います。通常は、着手金が支払われるまで案件に着手しないので、早期対応が必要な場合は事前にお金を準備しておくのがよいと思います。

 

受任通知

着手金が入金されると、弁護士から速やかに相手方に対して受任通知と題する書面が発送されるのが通常です。以後、弁護士が窓口になって示談交渉を行っていくことになります。

 

示談交渉

相手方に受任通知が到達したら、示談交渉が開始されます。弁護士を通じて相手方に謝罪文を差し入れたり、示談金の額を中心とした示談の条件について交渉を進めたりしていきます。

 

示談の成立

相手方と示談の条件について調整ができたら、示談書を作成します。慰謝料を請求された側が示談書案を作成するのが通常です。弁護士に依頼している場合、示談書への署名(記名)押印は弁護士が行います。

慰謝料を請求されたときの流れ

2      裁判所が関与する手続

示談交渉が決裂した場合、裁判所が関与する手続に移行します。

 

民事調停

示談交渉が決裂した場合、相手方から民事調停の申立がなされることがあります。民事調停は、裁判所の調停委員の関与のもとに話し合いを行って合意による解決を目指す手続です。1か月に1回くらいのペースで期日が設定されます。要する期間はケースバイケースですが、3~6か月は要します。

慰謝料を支払う旨の調停が成立した場合、慰謝料の支払いを行うことになります。調停成立の見込みがない場合、調停は不成立や取下によって終了します。

 

民事裁判

示談交渉が決裂した場合、相手方から損害賠償請求(慰謝料請求)の訴えが提起されると民事裁判が開始されます。裁判に先立って民事調停を起こす必要はないため、民事調停を経ずに訴えが提起されることもあります。民事裁判は、調停のように合意を目指す手続ではなく、判決を目指す手続です。要する期間はケースバイケースですが、6~10か月は要するでしょう。

 

和解による民事裁判の終了

民事裁判の手続がある程度進行すると、和解が試みられることがあります。和解が成立した場合、判決は下されずに民事裁判が終了します。和解によって、慰謝料(解決金)の支払いが定められた場合、慰謝料の支払いを行うことになります。

 

判決による民事裁判の終了

民事裁判が開始された後、和解が成立しないまま手続が進行していくと判決(第1審判決)が下されることになります。

 

第1審判決後の流れ

第1審判決に対して、双方から2週間以内に不服申立て(控訴提起)がなされなければ、判決が確定します。確定した判決の内容が、慰謝料の支払いを命じるものであれば、確定後速やかに支払いを行う必要があります。

第1審判決に対して、いずれかの当事者から不服申立て(控訴提起)がなされた場合、控訴審(通常は高等裁判所)にて審理が行われることになります。控訴審も和解で終了することがありますが、和解に至らない場合は控訴審の判決が下されます。

控訴審の判決に対して、いずれかの当事者から不服申立て(上告)があり、これが受理された場合、上告審(通常は最高裁判所)が開始されますが、受理されなかった場合は控訴審判決が確定します。

慰謝料を請求されたときの流れ

3      金銭の支払い

以上説明してきたとおり、慰謝料を支払う旨の①示談が成立するか、②和解が成立するか、③判決が確定すると、慰謝料の支払いを行うことになります。

 

慰謝料を任意に支払う場合

示談や和解が成立した場合、そこで定められた期日までに相手方に対して慰謝料(示談金、和解金、解決金など名目はさまざま)を支払うことになります。

示談金は、慰謝料の請求を受けた人が直接、相手方に送金することもありますが、弁護士に依頼している場合は、弁護士にお金を預けたうえで、弁護士から相手方に送金するのが通常です。

 

強制執行を受ける場合

慰謝料を支払う旨の和解が成立したり、判決が確定したりしたにもかかわらず、支払いを怠っていると相手から強制執行の申立てをされることがあります。

強制執行が申し立てられると、預金、給料債権、その他資産から直接、慰謝料相当分が回収されることになります。

 

弁護士への報酬金の支払い

示談の成立によって事案処理が終了した場合、成果に応じて弁護士に対して成功報酬を支払うことになります。

以上が、不倫や不貞によって慰謝料請求をされた場合の一般的な流れであり、金銭の支払いが終了すると弁護士による事案処理は終了となります。

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