示談金の相場について

刑事事件の示談金相場の形成

罪を犯した場合、刑事的には犯罪が成立して処罰の対象となりますが、それと同時に民事的には不法行為が成立して被害者に対する損害賠償義務が発生します。

示談金とは、この民事上の損害賠償義務の支払いとして行われるものと理解できます。

したがって、示談金の適正な金額とは、基本的には、不法行為に基づく損害賠償請求の訴えを提起した場合に裁判所によって認定される金額に等しいと考えることができます。

しかし、刑事事件の示談の多くは裁判外の合意によって成立します。

刑事事件では、被害者の被害感情が強いことがあるので、適正金額を上回るような金額でなければ示談が成立しないことがあります。反対に、刑事事件の加害者の経済状況によっては適正金額以下で示談が成立することもあります。

このように、刑事事件における示談金の相場は、民事的に適正な損害賠償額を前提としつつも、刑事事件特有の事情によって形成されています。

刑事事件の示談金相場の形成

 

示談金は慰謝料とそれ以外に分けて考えることができる

刑事事件の示談金は、慰謝料と慰謝料以外の損害によって構成されている、と考えると分かりやすいと思います。

比較的軽微な盗撮や強制わいせつの事案では、慰謝料以外の損害が発生しないか、発生していたとしても少額であることが多いので、便宜上、全て慰謝料に含めて考えることがあります。このような場合、示談金の相場はほぼ慰謝料の相場を意味することになります。

対して、傷害、殺人、自動車運転過失致死傷のように、慰謝料のほかに、治療費、通院交通費、休業損害、逸失利益等の多額の損害が発生する事案もあります。このような事案では個々の損害項目を的確に評価しなければ示談金の適正金額を求めることはできません。

示談金は慰謝料とそれ以外に分けて考えることができる

 

損害の評価が難しい場合がある

一つの犯罪行為が被害者に対していろいろな不利益を及ぼしている場合、どこまでを法律上の損害に含めるべきか、そして損害をどう金銭評価すべきか、難しいケースがあります。損害論は、法律家の間でも見解が分かれやすいところです。慰謝料以外の損害も多額に及ぶようなケースでは、民事的な損害論にも精通している必要があります。

 

犯罪類型別の示談金の相場

財産に対する罪(窃盗、詐欺、恐喝、横領、強盗)

窃盗罪のように他人の財産を侵害する犯罪では、侵害された財産に相当する金銭を支払うと、通常は被害が全部回復したと評価されます。

しかし、被害者が個人である場合、10万円を盗んだ場合に10万円を返すとの示談が成立することは稀です。実際、窃盗の被害者は、自分の物が盗まれたことに対して精神的なショックを受けているのが通常です。また、たとえば自転車やスクーターを盗まれてしまって生活上の不便を強いられたということも珍しくありません。警察に被害届を出したり、現場検証に立ち会ったり、事情聴取を受けるのも大変です。

したがって、被害者が個人の場合、実損害に10万円~30万円程度を加算した金額でないとスムーズに示談できないことが多いと思います。

対して、大型量販店で万引きしたような事案では、示談に応じてもらえる場合、商品の値段相当額が示談金となるのが通常です。

財産犯でも、被害額が高額になる場合、被害者は確実な被害回復に重きを置くので、加害者が被害全額を支払えるのであれば、被害金額が示談金額となることも珍しくありません。

 

生命に対する罪(殺人・自動車運転過失致死)

生命、身体という法益に対する侵害については、交通事故の「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(いわゆる赤い本)に掲載されている損害額算定基準によって損害額が算定されるのが通常です。

慰謝料は過失犯である自動車運転過失致死の場合は2000万円~2800万円程度になると思われますが、殺人の場合、故意に人の生命を奪っていることに着目して慰謝料の額は3000~3500万円程度になります。また、特に悪質な場合は3500万円を超えることもあり得ます。

その他の損害項目としては、逸失利益が大きな金額を占めることになります。逸失利益は、亡くなった方が将来得るはずだった収入を損害として把握するものです。したがって、被害者の年収や年齢によって金額が大きく変わります。

 

身体に対する罪(傷害・暴行・自動車運転過失致傷)

傷害、自動車運転過失致傷の損害は、赤い本の基準で算定されることになるのが通常です。ただし、故意犯である傷害では、慰謝料額は赤い本基準より若干高水準になる傾向があるようです。慰謝料のほかに休業損害や逸失利益が高額になることもあります。

暴行は、傷害結果が発生していないので、通常は慰謝料のみが問題になります。軽微な事案が多いので慰謝料は数万円~30万円程度が相場になります。

 

迷惑防止条例違反(盗撮、痴漢)

盗撮や痴漢は各都道府県が定める迷惑防止条例に違反する罪です。慰謝料のみを問題とすればよい事案が多いと思われます。慰謝料の相場は、10万円~50万円程度になると思われますが、盗撮、痴漢の態様や被害者の年齢によっては100万円を超えるような高額な慰謝料が必要になることもあるでしょう。

 

性犯罪(強制わいせつ、強制性交)

強制わいせつに該当する行為は、条例違反の痴漢に近いものから強制性交未遂に近いものまでかなり幅が広いため、慰謝料の相場もかなり幅広くなります。

大まかにいえば、強制わいせつの慰謝料は、痴漢に近いものは50万円以下、中間的なものは50万円~200万円程度、強制性交未遂に近いものであれば200万円~400万円程度になるといえるでしょう。

強制性交(強姦)の慰謝料は、概ね200~600万円程度が相場のようですが、1000万円近くになるものもあります。

強制性交は、行為や結果に応じて慰謝料の金額が相当高額になり得る犯罪類型です。その分、加害者の支払能力に応じて示談金の額が大きく異なり得るといえます。

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