離婚手続の知識-協議離婚

1 協議離婚とは

協議離婚とは協議離婚とは、当事者の合意によって成立する離婚の方式です(民法763条)。

夫婦の双方が離婚する意思を有しており(実質的要件)、離婚届を提出することによって成立します(形式的要件)。

離婚届の署名欄には夫婦のそれぞれが自ら氏名を自署して押印することで離婚意思を示します。したがって、夫婦の一方が離婚届を提出したいと思っても、他方の署名・押印を得られなければ離婚届を提出することができず、協議離婚はできません。

 

2 協議離婚の流れ

このように協議離婚は、離婚届を作成して提出することによって成立します。極論すれば離婚しようと思い立ったその当日に協議離婚を成立させることも可能です。このように簡便な離婚の方式ですが、実際は離婚届を提出する前に話し合わなければならないことがあるのが通常です。

たとえば、未成熟の子がいる場合はどちらが親権者になるか、養育費の金額、面会交流をどうやって行うか、財産分与をどうやって行うか、慰謝料を支払うか、年金分割の割合をどうするか等です。これらは離婚に付随する重要な問題です。

特に親権者の記載は離婚届の必須の記載事項であり、これが記載されていないと離婚届は受理されないので、事前に取り決めておく必要があります。

その他の問題は離婚後に話し合って決めることも可能ですが、特に離婚を急ぐ事情がない限り、離婚を成立させる前に話し合うのが通常です。

 

協議離婚する場合の一般的な流れは次のようになります。

 

当事者間で話し合い(離婚に付随する問題をどうするか)

協議がまとまる

公正証書の作成

離婚届の提出

子の氏の変更

 

3 離婚に付随する問題

必要に応じて以下のような項目について話し合って決めることになります。

 

(1) 親権者の指定

夫婦に未成年の子がいる場合には親権者を決める必要があります。日本の法律では、離婚後には単独親権となり、父か母のいずれか一方が親権者となります。そこで、離婚届には親権者の指定に関する欄が存在し、これが記載されていないと離婚届は受理されません。そのため、夫婦の双方が親権を主張して譲らない場合、協議離婚はできないということになります。

 

(2) 養育費の支払

夫婦に未成熟の子がいる場合、子と一緒に暮らしていない方の親は、子と一緒に暮らしている親に対して子の養育費を支払う義務を負います。養育費は、通常離婚が成立した月から毎月支払うことになるので、離婚届を提出する前にその金額や支払い方法を決めておくのが通常です。

 

(3) 面会交流

夫婦に未成年の子がいる場合、子と一緒に暮らしていない親が子と直接会ったり、電話やメールで意思疎通を図ったりすることを面会交流といいます。

面会交流については、離婚後にもスムーズに行えるという場合は特にその要領を取り決めておく必要がありませんが、スムーズに行えなさそうな場合は事前に頻度(例:1か月に1回)、日時(例:土曜日の10時~17時)、方法(例:面会、電話、手紙)その他の条件について取り決めておいた方がよいということになります。

 

(4) 財産分与

財産分与とは、夫婦間の財産格差を調整するためのものであり、一方から他方の配偶者に対して財産的な給付を求めることができるという制度です。

財産分与は、夫婦の実質的な共有財産を清算するために行われるのがメインであり、婚姻中に多くの財産を形成した方が他方に対して金銭を支払うかたちで行われるのが原則です。

財産の内容によって、一方が多額の金銭を支払うことになるケースもあれば、金銭の支払いが全く行われないようなケースもあります。

 

(5) 慰謝料

配偶者の一方が不倫したことが原因で離婚に至った場合等、一方の配偶者に離婚に対する責任を問える場合、慰謝料の支払いを求めることができます。

 

(6) 年金分割

年金分割とは、離婚した場合に夫と妻が将来受給できる老齢年金の格差を埋めるための制度です。65歳になったら受給できる老齢厚生年金は、働いていた時の収入が多かった人ほど多くもらえます。

例えば、夫が会社員で妻が専業主婦という夫婦が離婚した場合、夫は将来自分の収入に見合った厚生年金を受給できますが、妻はわずかな年金しか受給できないという事態が生じます。

これは不公平なので、夫の取り分を減らして妻の取り分を増やそうというのが年金分割です。実際には、厚生年金の額を左右する保険料の納付実績を分割することになりますが、これをどのくらいの割合で分割するのかを合意で決めることができます。

 

4 協議離婚で注意すべきこと

(1)離婚不受理届

協議離婚が有効に成立するためには、夫婦の双方が離婚する意思を有しており、適式に作成された離婚届を提出する必要があります。

しかし、離婚届の提出を受け付ける市町村等の窓口では、離婚届が書面上きちんと作成されているように見えれば離婚届を受理します。

そのため、夫婦の一方が離婚に同意していなかったり、親権者をどちらにするかについて合意できていなかったりしても、一方が勝手に離婚届を作成し、それが受理されてしまうことがあります。

このような離婚は当然に無効となると考えられていますが、実際に離婚の無効を前提とした法律関係を積み上げるためには、離婚の無効を主張する側で離婚無効の裁判を提起して立証しなければなりません。

これを未然に防止するためには、事前に離婚届の不受理申出をしておく必要があります。不受理申出をしておけば、仮に離婚届が提出されたとしても、不受理申出をした本人が市役所等に出頭して届出をしたことが確認できない限り、離婚届が受理されません。

 

(2)公正証書の作成

離婚に伴い養育費、財産分与、慰謝料等の名目で将来的に金銭の支払いを受けたり、物の引渡を受けたりする場合、それを受け取る側は公正証書の作成を考えるべきです。

なぜなら相手が約束に反して金銭の支払い等をしてくれない場合、公正証書を作成しておけば即座に強制執行に移れますが、公正証書がないと改めて調停や裁判を開始する必要があります。

調停や裁判にはかなりの期間、労力、費用を要するうえ、当初合意していた内容とは違った結論になる可能性もあるので、大きな違いといえます。

そして、公正証書を作成しておけば、相手方は約束を破ればすぐに強制執行されてしまうというプレッシャーにさらされるため、そもそも約束をやぶらずに養育費等を支払ってくれる可能性が高まります。

 

5 協議離婚ができない場合

離婚の協議がまとまらない場合、たとえば、離婚するかどうか、親権者をどちらにするか、養育費の金額をいくらにするか、財産分与の額をいくらにするか、慰謝料を支払うかどうかについて夫婦の意見が一致しない場合には双方納得のうえで離婚届を提出することはできないので、協議離婚が成立しないということになります。

そのような場合、話し合いを続けても時間ばかり過ぎてしまうので、裁判を提起して裁判官に結論を出してもらうということが考えられます。

しかし、離婚のような家庭の問題は、なるべく当事者が話し合って結論を出した方がよいという考えの下、いきなり裁判を起こすのではなく、裁判の前に調停を行うべきであるとされています。これを調停前置主義といい、調停を経ずにいきなり裁判を提起しても、調停に回されるのが原則です。

したがって、協議離婚が成立しない場合、次なるステップとしては、家庭裁判所に離婚を求めて調停を申し立てるということになります。

 

 

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