交通事故に強い弁護士はどうやって探せばよいのでしょうか。交通事故に強い弁護士を選ぶには、交通事故に強い弁護士の条件を知る必要があります。
<交通事故に強い弁護士の条件>
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このページの目次
1 交通事故の案件処理の経験が豊富であること
まず、交通事故の案件を一定数以上処理した経験があることが必要です。示談交渉は、相手方保険会社の担当者との話し合いです。交渉は一方通行では成り立ちません。保険会社独特の考え方や担当者の考えを把握して妥協点を模索する必要があります。その技術を磨くためには、どうしても経験が必要です。ただし、処理した案件数が多ければ多いほどよいというわけではありません。
何百、何千と案件を処理したとしても、保険会社の意向に逆らわずに示談していれば経験値は積み重なることはないからです。
一定の案件の数をクリアーしている弁護士であれば、次に必要なのは案件処理の質です。
2 裁判で争うことを躊躇しないこと
案件処理の質が高い弁護士はどうやって選べばよいでしょうか。弁護士の仕事内容は複雑であり、事件に関与していない第三者が弁護士の仕事の良し悪しを評価するのは非常に困難なことです。
その弁護士の過去の成功事例を見て、大成功したことがある弁護士を選ぶというのも一つの方法ではあります。しかし、示談金額はいろいろな要因で増額することがあるので、単純に示談金を増額させたことがあるからといって、それだけで交通事故に強い弁護士であるとはいえません。
交通事故の案件に限ったことではありませんが弁護士の技術は、処理した案件の数で決まるわけではありません。弁護士の能力は、一つ一つの案件に真剣に取り組むことによって向上します。したがって、交通事故に強い弁護士とは、一件、一件、交通事故の案件に真剣に取り組み、リサーチの労を惜しまず、困難な問題に立ち向かい、解決した経験が多い弁護士ということになるでしょう。
1人の弁護士が多数の案件を処理しようとすれば、より効率に比重を置かざるを得なくなるので、弁護士を選ぶ際に処理件数の多さにこだわる必要はありません。
では、こうした弁護士であるかどうかはどうやって見極めたらよいでしょうか。一つの見極め方として、その弁護士が、「示談交渉が決裂した場合には躊躇なく裁判に移行するという気概」を持っているかどうかです。
裁判は、弁護士にとっても大きな労力を要するものです。たとえば、弁護士にとっても理論的に難しいという問題がある場合、示談交渉では突き詰めて考えなくても済みますが、裁判ではあいまいに済ますことはできないので、徹底的なリサーチが必要になります。
当事務所では、いつでも裁判に移行できるように、示談交渉の段階から難しい論点についても裁判に耐えうる程度のリサーチは行っています。このように、いつでも裁判に移行する気概があるということは、効率を二の次に考えて案件処理の質を重視していることの表れといえるでしょう。
3 後遺障害等級認定に詳しいこと
後遺障害の認定が重要な理由
交通事故で怪我を負った場合、一定期間通院しても症状が改善しない場合にはある時点で症状固定と診断されることになり、以後の治療費は損害として請求できなくなります。
この時、残存している症状が、後遺障害等級に該当すると判断されると、被害者が請求できる損害項目の中に「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の2項目が追加されることになります。
後遺障害等級は、1級から14級まであり、1級から14級にかけて順に軽い等級になるという扱いです。
たとえば、むち打ち症(頸椎捻挫、腰椎捻挫)で該当することが多いのは12級か14級ですが、12級の場合の後遺障害慰謝料は290万円程度、14級の場合の後遺障害慰謝料は110万円程度になります。
逸失利益とは、後遺障害により労働能力が失われたことで減収につながるという発想の下に認められる損害項目であり、それは以下のような計算式で算定されます。
<逸失利益の算定式> (基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数) |
例えば、以下の事例で逸失利益を算定してみます。
後遺障害等級 |
14級 |
基礎収入(被害者の事故前年の年収) |
500万円 |
労働能力喪失率(14級の場合) |
5% |
労働能力喪失期間(むちうち14級の場合) |
5年 |
労働能力喪失期間5年に対応するライプニッツ係数 |
4.5797 |
この場合の計算式は、次のようになります。
500万円×5%×4.5797=1,144,925円
したがって、この事例の逸失利益は、1,144,925円となります。先に述べたとおり、これに後遺障害慰謝料110万円(14級の場合)が加算されるので、この事例では後遺障害等級14級に該当したことにより賠償総額が約224万円も増えることになります。
このように後遺障害等級に該当するかどうかによって賠償額の総額が大きく変わってくるので、適切に該当性の認定を受けられるようにすることが重要です。
後遺障害等級はどうやって認定されるか
後遺障害等級の認定を受けるためには、加害者の任意保険会社から自賠責保険に請求してもらう方法(事前認定)と、被害者が自分で自賠責保険に請求して行う方法(被害者請求)の2つの方法があります。
事前認定のメリットは、事務手続の手間を省けるという点にありますが、後遺障害認定の重要性を考えれば、本来、対立当事者の立場にある加害者の任意保険会社にこれを丸投げするのは躊躇されるところです。
当事務所では、後遺障害に該当する可能性のある事案では、基本的に全て被害者請求を代行しています。
いずれの方法で後遺障害等級の認定を受けるにしても、それは各都道府県にある自賠責損害調査事務所の損害調査の結果に基づいて行われます。この損害調査において、通院状況、診断書、後遺障害診断書、事故発生状況等の詳細が調査されることになりますが、後遺障害等級への該当性判断にあたっては医学的な所見が大きな比重を占めることになります。
したがって、治療の段階から、交通事故の外傷の治療に詳しい病院を選び、適切な検査や治療を受け、カルテに治療の経過を詳しく残してもらうことが重要です。後遺障害診断書は、症状固定になった後に作成される診断書であり、損害調査においてはとりわけ重要な判断材料です。後遺障害診断書をなるべく詳細に作成してもらうことは、後遺障害の認定を受けるために重要です。
したがって、交通事故に強い弁護士とは、通院の仕方や医師とのコミュニケーションの取り方、後遺障害診断書の作成の仕方等についての知識と経験を有する弁護士であるといえます。