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パワハラ・セクハラとは
パワー・ハラスメントとは、職場において優越的な地位にある上位者が下位者に対して、精神的・肉体的な苦痛を与える行為です。
セクシャル・ハラスメントとは、相手方の意に反する性的言動のことをいいます。
相手方の感じ方だけで決まるわけではない
パワハラと評価されるためには、業務上必要かつ相当な範囲を超えた行為を行ったことが必要です。上司が部下を叱責して、部下が精神的苦痛を感じたらそれだけでパワハラになるわけではありません。その上司の叱責の態様が、業務上必要かつ相当な範囲を超えていると評価されてはじめてパワハラとなります。
また、セクハラと評価されるためには、問題となる行為が社会的見地から見て不相当であることが必要です。相手方が嫌だと感じればそれだけでセクハラになるわけではありません。問題となる言動が、社会的に許容できないものと評価されてはじめてセクハラになります。
パワハラ・セクハラの具体例
パワハラやセクハラの具体例は以下のとおりです。
具体例 | |
パワハラ | 暴力を振るう |
侮辱、暴言、脅迫 | |
仲間はずれや無視 | |
無意味な仕事を命じる | |
不可能な仕事の強要 | |
セクハラ | 交際を拒否されて気まずくなり仕事から外す |
部下に性的な経験について質問する | |
同僚の前で大きな声で性的な会話をする | |
食事に誘ったが断られたので、冷たい態度をとる | |
ゴルフを教えるつもりで後ろから体を抱え込む | |
肩や腕をマッサージする |
加害者の責任
パワハラ、セクハラを行った加害者本人は以下のような責任を問われることがあります。
民事責任 | 損害賠償請求(慰謝料、治療費、休業損害等) |
刑事責任 | 暴行、傷害(パワハラ)、強制わいせつ(セクハラ) |
会社内の処分 | 懲戒処分(譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇) |
会社の責任
会社は、労働者がセクハラやパワハラの被害に遭わないように職場を管理する義務を負っています(職場環境配慮義務)。また、会社は、個々の従業員が行った不法行為について使用者としての責任を負っています(使用者責任)。
したがって、上司が部下に対してパワハラやセクハラを行った場合、会社も職場環境配慮義務違反や使用者責任に基づいて損害賠償請求を受けることがあります。
会社の対処方
会社がパワハラやセクハラで損害賠償請求されそうな場合の対処法は次のとおりです。
従業員からのSOSに適切に対処する
従業員からいきなり損害賠償請求書を受けることはまれで、事前に何らかの兆候があるのが通常です。たとえば、会社の相談窓口に相談が寄せられたり、上司が部下から被害の相談を受けたりすることがあります。従業員もできれば会社を訴えるような大事にしたくないはずです。こうした兆候を見逃さずに適切に対処すれば、話が損害賠償請求に進む前に解決できることがあります。会社の相談窓口を弁護士に委託すると、従業員が相談しやすくなり、トラブルの早期発見につながります。
社内調査を実施する
会社が、労働者からパワハラやセクハラの被害の申告を受けて何らかの対応を求められた場合、どう対処するべきでしょうか。お茶を濁すような対応では将来、被害者から訴えられる可能性が高まります。かといって、はじめから加害者が悪いと決めつけて処分したりすれば、将来、加害者から損害賠償請求を受ける可能性もあります。まさに会社は板挟みの状態ですが、リスクを減らすためにはできる限りの対応を取るしかありません。その第一歩が、社内調査です。関係者から丁寧に事情を聞くなどして、パワハラやセクハラの有無を調査します。この場合、外部の弁護士に調査を委託すると、公平性を保ちながら充実した調査を行うことができます。
パワハラ、セクハラと認定できるか検討する
社内調査が終わったら、調査の結果、パワハラやセクハラが認定できるか検討して結論を出します。きちんと検討したことを示すためにも、会議や委員会を開催して複数人で検討したり、顧問弁護士等から助言を受けたりするとよいと思います。また、検討の経緯を証明するために議事録や相談録等を残すとよいでしょう。
処分を決めて報告する
パワハラ、セクハラが認定できた場合は、加害者を処分します。加害者に示談を勧めるのもよいでしょう。パワハラ、セクハラが認定できない場合、加害者を処分することはできないので、あとは被害者と加害者に問題の処理を委ねます。いずれにせよ不利益な判定をされる側の従業員にはその理由を丁寧に説明するべきです。弁護士が調査チームに入っていれば、法的な説明が可能となります。会社の誠意が伝われば、後日、被害者や加害者から会社が損害賠償請求を受けるリスクは低くなるはずです。
損害賠償請求を受けたらするべきこと
たとえば、労働者から会社に宛てて、損害賠償を求める内容証明郵便が送付されてきたらどうするべきでしょうか。まだ社内調査が行われていなければ、急いで社内調査を行います。社内調査が済んだら、基本方針を定めて労働者に回答します。示談交渉が決裂すると紛争が長期化する可能性があります。そこで、基本方針を決める前に弁護士に相談してどのようなリスクがあるのか助言を受けるとよいと思います。
労働審判や労働裁判が開始されたら
労働審判や労働裁判が開始された場合、弁護士と連携してこれに対応していくべきですが、できればここに至る前にトラブルを解決できた方がよいと思います。