交通事故の被害を受けた場合、人損について示談金の提示を受けるのは、治療が終了した後になります。治療には通常数か月を要するので、賠償額の提示を待っていると事故発生から何か月も経過することになるでしょう。
交通事故の案件処理において、示談交渉は弁護士が行うメインの業務であることは間違いありませんが、被害者の目線からすると賠償額の提示を受けて示談交渉が開始されるまで法律相談を受けないでいることにはリスクがあります。
交通事故の被害にあったら、できれば早めに弁護士の法律相談を受けることをおすすめします。その理由を御説明します。
<早期の法律相談をおすすめする理由>
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このページの目次
1 早期に交通事故の案件処理の流れを理解する
交通事故の被害に遭うといろいろなイベントに直面することになります。たとえば、事故の発生にはじまり、当日の現場検証、保険金請求、通院、転院、警察への被害届の提出、実況見分への立ち会い、治療の終了、後遺障害等級認定の手続、示談交渉の開始、示談成立、示談金の支払い等です。
これらがどうやって進んでいくのかはじめのうちに把握することで、不安が和らぎますし、その時々でどのような点に注意すべきか理解できます。また、将来、どうなったらまた法律相談に来たらよいのか、弁護士に依頼したらよいのかの指標も入手できます。
2 早期に適切な治療を受ける体制を整える
当然のことですが、怪我を負った場合、早期に適切な治療を受けることが必要です。治療費は、加害者側の任意保険会社が病院に支払ってくれるのが通常ですが、何らかの理由でこうした対応をしてくれないこともあり得ます。そのような場合、一括対応が開始されていない原因を取り除いて、保険会社に一括対応を求める必要があります。どんな原因でそうなっているのか、被害者には理解が難しいことがあります。その原因を明らかにするために早期に法律相談を受けることが有用です。
もし一括対応をしてもらえない場合には、健康保険を用いて治療を行うようにするなどして、とにかく治療費がなくて治療を継続できないということがないようにしなければなりません。
3 早期に通院の意味を理解する
通院の目的は、いうまでもなく怪我の治療にあります。それと同時に通院の結果作成されるカルテや診断書等の医療記録は、治療の終了時期、休業損害、慰謝料、後遺障害認定の判断材料になります。そのためには、漫然と通院するのではなく、医師と充分なコミュニケーションを取ってその時々の症状を正確かつ詳細に把握してもらうことが重要です。
こうしたアドバイスは、通院の初期に受けておく必要があります。通院が終了した後で助言を受けたとしても注意しようがないからです。
4 早期に証拠の散逸を防ぐ
事故発生から数か月後に示談交渉が開始された場合、ある損害について請求しようとしたら証拠がなくなっていたということがあります。たとえば、通院するために利用したタクシーの領収証などを捨ててしまったという場合、証拠がないものについては支払いを受けることができない可能性があります。
事故態様に争いがあって過失割合が問題になるようなケースでは、目撃者がいれば、目撃者の記憶が鮮明なうちに目撃証言をしてもらうようにお願いしておく必要がありますし、防犯カメラ等に事故の様子が映っているのであればデータが消去される前にデータの提供をお願いしたりする必要があります。ドライブレコーダーやスマートフォンで撮影した映像なども、適切に保存しておかないと失われてしまうこともあります。
車の損傷については、任意保険会社のアジャスターと呼ばれる人が損害調査を行うのが通常ですが、これが行われていないような事案では、自分で事故直後の損傷箇所の写真を撮ったり、修理工場に修理見積書を作成してもらったりする必要があります。積載物が壊れたような場合は、自分自身で証拠を残しておかなければ、証拠が散逸してしまうケースが多いといえます。
法律相談を受けることで、証拠を捨ててしまったり、紛失してしまったり、収集できなくなったりするリスクを減らすことができますし、どうやって適切に証拠を保全するのか知ることができます。
5 早期に保険の仕組みを理解する
交通事故が発生した場合、被害の回復のためには保険を適切に利用することが重要です。ひとくちに保険といっても、交通事故の被害者に関係する保険は以下のように多岐にわたります。
被保険者 |
保険の種類 |
保険の対象 |
加害者側 |
自賠責保険 |
被害者の人損 |
対人賠償保険 |
被害者の人損(自賠責上乗せ) |
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対物賠償保険 |
相手の物損 |
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対物超過特約 |
経済的全損時の超過部分 |
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被害者側 |
自賠責保険 |
加害者の人損 |
対人賠償保険 |
加害者の人損(自賠責上乗せ) |
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搭乗者傷害保険 |
室内搭乗者の人損 |
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人身傷害保険 |
被害者の人損 |
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対物賠償保険 |
加害者の物損 |
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車両保険 |
被害者の物損 |
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健康保険 |
被害者の人損 |
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労災保険 |
被害者の人損 |
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権利保護保険 |
被害者の弁護士費用 |
もちろん、事案ごとに問題になる保険もあれば、問題にならない保険もあるので、どのような場合にどのような保険を利用するべきか、はじめのうちに理解しておく必要があります。
当事務所では、搭乗者傷害保険や人身傷害保険のように複雑な保険の仕組みについての法律相談も受け付けております。