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ご家族が逮捕されたら
夫、妻、息子、娘などが逮捕された場合、ご家族は衝撃を受けるとともに、さまざまな思いを抱くでしょう。例えば次のような考えが浮かんでくるのではないでしょうか。御自分の夫や妻、息子や娘など、大切な家族が逮捕された場合、どう対処したらよいのか、逮捕とは何か説明したいと思います。
<家族の心配ごと>
- 夫(妻、息子、娘)はいったい何をしたのだろう?
- 本当に罪を犯したのだろうか?
- 誰にどんな被害を与えてしまったのだろう?
- 職場や学校にはどう説明したらいい?
- これからどうなってしまうのだろう?
- いつ帰ってこられるのだろう?
- とにかく心配なので顔を見たい。
逮捕とは
逮捕とは、罪を犯した疑いをかけられた者が、身体を拘束されることをいいます。
拘束といっても、ずっと手錠をかけられたり、縄で縛られたりするわけではありません。逮捕時に手錠をかけられたりすることはありますが、その後は手錠を外され、外界から隔離された施設の中に止め置かれることになります(留置)。留置場所は、警察署内にある留置施設(留置場)が通常ですが、拘置所で留置されることもあります。
逮捕には、現行犯逮捕、緊急逮捕、通常逮捕の3つの種類がありますが、いずれにせよ逮捕によって拘束される時間は、1つの事件で72時間(3日間)が限度とされています。
逮捕されたらいつ釈放されるか
逮捕された後、警察の取り調べを受けることになるのが通常です。
その過程で疑いが晴れたり、逃亡や証拠隠滅の危険がないことが明らかになったりすれば、72時間が経過する前に釈放されることがあります。しかし、多くは72時間が過ぎても釈放されないのが実情です。
逮捕は72時間が限度なのになぜ釈放されないかといえば、それは勾留という処分に移行するからです。釈放されない場合、72時間以内に逮捕から勾留(起訴前勾留)に切り替わります。勾留されると、最長で20日間の身柄拘束を受けることになります。
勾留中に起訴されると起訴後勾留に切り替わります。起訴後勾留は、原則2か月とされていますが、1か月単位で更新されることがあります。
もちろん、逮捕された後の流れにはいろいろなパターンがあります。しかし、逮捕後の典型的なパターンの一つとして、何か月も釈放されないことがあるということを知っておくべきでしょう。
逮捕された家族と面会する方法
逮捕、勾留されている人と面会したり、差入をしたりすることを接見交通といいます。
ただし、逮捕の段階では御家族は接見できません。御家族が面会できるようになるのは勾留以後です。家族等の面会が許されるのは平日の日中だけであり、身柄拘束場所である警察署や拘置所を訪ねて面会します。面会時間は警察署の場合は15分に限定されていることが多く、警察官の立ち会いも行われるため、思うように会話できないことが多いでしょう。また、勾留後でも接見禁止決定が出ていると御家族の接見は許されません。
弁護士は、逮捕段階でも、土日祝日や夜間でも接見が可能で、時間制限もなく立ち会いもつきません。したがって、逮捕された御家族と充分な会話をするためには、弁護士を弁護人に選任して接見してもらうのがベストです。
ご家族の接見交通
- 逮捕段階では不可
- 勾留後も接見禁止だと不可
- 土日、祝日、夜間は不可
- 1回15分程度で立ち会いがつく
逮捕後の初動が重要な理由
ご家族が逮捕されたら、すぐに弁護人を選任して弁護活動を開始するべきです。その理由は次のとおりです。
逮捕された方の気持ちを落ち着かせる
逮捕された方は、その特殊な体験に対して強い不安を感じるのが通常です。留置施設は外界から遮断されているので、自分の味方がいないような錯覚に陥りがちです。不安が募ると体調を崩すかもしれませんし、集中力を欠いて取り調べの際に捜査機関に促されるままに事実と異なる供述をしてしまうかもしれません。そこで、まずは、早期に接見して味方がいることを知らせることが重要です。刑事手続に詳しい弁護士が味方になってくれるという思いは大きな支えになるはずです。
早期の釈放を目指す
逮捕されると留置施設から外に出ることができません。そのため、職場に出勤することもできないし、学校へ通うこともできません。大切な約束や予定を守ることもできなくなります。何より、留置施設で生活することは非常にストレスです。もし、刑事手続から解放される日が来たとしても、その時、職業や学業、人間関係等に取り返しのつかない不利益が及んでしまうことはできるだけ回避したいところです。そのためにはできるだけ早期に釈放してもらう必要があります。
しかし、捜査機関は、そもそも身柄拘束の必要があると判断したからこそ逮捕したわけですから、こちらから積極的に働きかけをしないと釈放は望めません。
したがって、早期の釈放を望むのであれば、早期に弁護士に依頼して釈放のための働きかけをしてもらうべきでしょう。
早期の示談成立を目指す
被害者と示談が成立しているという事実は情状を良くします。あくまでケースバイケースではありますが、逮捕前に示談が成立していればそもそも逮捕されないこともあります。逮捕後に示談が成立すると、釈放や不起訴の可能性が若干高まります。もし起訴されてしまい裁判を受けることになったとしても、裁判官から言い渡される刑罰の内容は相対的に軽くなります。
このように示談の成立は、重要な情状事実ですが、示談のためには被害者に合意してもらう必要があります。
被害に遭われた方は、「なぜ、未だに何の謝罪もないのだろう?」と思っていることがあります。被害者に心からの謝意を示し、示談に応じてもらうためには、可能な限り早く謝罪と示談の申入れをするべきです。
しかし、通常、加害者やその家族が被害者と連絡を取ろうとしても、連絡先が分からなかったり、連絡を取っても断られたりすることがあります。また、加害者側から連絡を取ると、被害者を怯えさせてしまい無用なトラブルに発展することもあります。
したがって、弁護士に依頼して、できるだけ早く被害者に謝罪と示談の申入れを行うべきでしょう。
不利な証拠の作成を防ぐ
ご家族が逮捕されたからといって、罪を犯したことが確定したわけではありません。逮捕された御家族が、もし濡れ衣を着せられそうになっているのであれば疑いを晴らす必要がありますし、犯罪が成立する場合でも事実よりも悪質なものと誤解されないようにする必要があります。
逮捕は捜査の初期に行われるのが通常なので、捜査機関も事実の詳細を把握していないのが通常です。捜査機関は、逮捕後に被疑者を取り調べることで事実の詳細を把握し、有罪の証拠を作り上げていきます。
もしこの過程で被疑者に不利な内容の証拠(供述調書等)が作成されてしまうと、後でこれを覆すのは難しくなります。
そのようなことにならないように、逮捕されてしまった方にできるだけ早く面会して、取り調べに対する心構えを伝授する必要があります。ただし、単純に捜査に対して非協力的な態度を示せばよいというわけではありません。事案に応じて、認めるべきところは認め、反省すべき点は反省し、否定すべきところは否定するというケースバイケースの対応が必要です。弁護士であればこうした助言ができるはずです。
刑事手続を理解してもらう
逮捕された方が、捜査機関(警察官、検察官)に対して適切な対応を取るためには、刑事手続について理解しておく必要があります。被疑者には黙秘権、供述調書に関する署名押印拒否権や訂正申立権等が保障されており、これらを適切に行使できるようにしておく必要があります。
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